HARUさんの絵本の時間 #1

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◇  赤さがしの季節がやってきた!

『もみじのてがみ』作・絵/きくちちき、小峰書店、2018

空気も涼しくなり、秋めいてきましたね。
皆さんにはもう、「もみじのてがみ」は届いたでしょうか。

【あらすじ】
つぐみが向こうの山から運んできた、「もみじのてがみ」。ねずみは、りすやひよどりたちと「もみじのてがみ」を見つけに、赤探しに出かけます。

▼    そろそろ「もみじのてがみ」が届くかな? そんな季節の感じ方

ねずみに届いた「もみじのてがみ」は、まさに秋の便りです。もみじが赤く色づき、ひらりと地に落ちたときに、それを拾った者への「もみじのてがみ」となるのです。自然から私たちに届く手紙は、そこに文字はなくとも、自然からの恵みにあふれています。

この絵本は、「あの赤はもみじかな?」「違ったー」というパターンの繰り返しで子どもたちにもわかりやすい構造になっています。また、画面いっぱいに広がる鮮やかな画風であることからも、読み聞かせにもおすすめです。

そして、ラストのもみじの赤があふれる見開きのページは、まさに圧巻です! 深く息を吸い込んで、その赤を胸いっぱいに取り込みたくなるような美しさが、大きな魅力になっています。

我が家では、よく子どもと電車の中から「色さがし」をします。たとえば、青がテーマのときは、「青の◯◯!」と、たくさんテーマの色のものを見つけられるかを競います。そろそろ、「赤さがし」が楽しい季節になってきましたね。

このおはなしでは、動物たちは一様に「もみじのてがみ」を見ると「あ!もみじのてがみ ゆきふるの?」と口にします。町にも、山にも、濃淡さまざまな赤があふれてきたら、秋が訪れた証拠。秋をたっぷりと感じるとともに、次に訪れる季節を予感させる−そんな読書の秋にふさわしい、どっぷりと自然あふれる秋を感じる絵本時間を過ごしてみてくださいね。

絵本専門士 藤井遥 

【2022年10月13日号】