2025年3月20日の大人のための絵本の会のテーマ は「花」。それに先駆けて、春の絵本のご紹介です。
春が来ないなら、自分で春を描いていく。
ないものを待っているだけではなく、積極的に自分の夢をかなえていこうと行動する姿勢に背中を押される気持ちがします。
(コクリエMK)
『はるがきた』作/ジーン・ジオン、絵/マーガレット・ブロイ・グレアム、訳/こみやゆう、主婦の友社、2011、amazon
3月に入ったかと思ったら雪予報が出ていたり、まだ冷たい雨風を感じる今日この頃ですね。春を待ち侘びる私たちにぴったりの1冊をご紹介します。

【あらすじ】
寒い冬ももう終わり、待ち遠しい春はすぐそこ。でも、今年の春はなかなかやってこなくて……。
町はまだ灰色、街路樹は枯れ枝で、人々は沈んだ気持ちでした。そんな時、男の子が言いました。
「ねえ!どうして春を待ってなきゃいけないの? 待ってなんかいないでさ、僕たちで街を春にしようよ!」
そこで、町の人々は町中を春に塗り替えていきます。しかし、その晩に激しい雨が降り春の絵は流されていないますが−。春の訪れを生き生きとした喜びとともに描いた絵本です。
【春が来ないなら、自分で春を描けばいいじゃない!】
男の子の一言で、町の人々は春を町中に描いていきます。
お店の壁や日よけ、大きなビルの一面、郵便ポスト、波止場の古い桟橋、つり橋、はたまた電車まで−。そして、次々と鮮やかに描かれていったのは、タンポポにおおわれた丘や小川、葉っぱやつるにラッパスイセン・ヒナギク・キンポウゲなどの花々、湖に苔におおわれた岩、羽ばたくルリツバメに、気持ちよさそうに座るカエル、葦と睡蓮の間をとびはねる魚たち。
人々の待ちわびる春の情景が生き生きと形になっていきます。その様子は、自分で望むものを形にしていく美しさと喜びを見せてくれるようです。
人々の描いた春が一度流されてしまったあとに、本当の春が訪れますが、絵本のページの中で徐々に町に鮮やかな色があふれ、世界が色づき塗り変わっていくような光景に心が洗われるような気持ちになります。
【春に集う人々の穏やかさと、明るい力】
何よりも、緑や鮮やかな花々の芽吹く春の中に、人々の生き生きとした生活が描かれていることが大きな魅力です。あたたかに世界が色づき始めると、みながお互いが集い、遊び、まどろみ、穏やかに暮らしている姿のひとつひとつが本当に幸せそうにうつります。
何かを待ってくすぶっているよりも、自分で動いてみる。物事を打開していく明るい力をこの絵本から分けてもらえる気がします。
『どろんこハリー』シリーズの著者コンビによる本作。カラフルであたたかなイラストが魅力の絵本です。
絵本専門士 藤井遥