『山のおふろ』文/村上康成、徳間書店、2003、amazon
【あらすじ】
白い雪景色の森の中。スキーを履いて山の中を散歩していた兄妹は、凍えていたトガリネ
ズミを見つけます。トガリネズミを助けたことをきっかけに、雪山の中の動物たちが集ま
るお風呂に辿りつきます。この絵本はしかけ絵本になっており、両開きで開いたときの動
物たちのなんともいえない気持ちよさそうな顔が大きな魅力の1冊です。
▼ 子どもだけが出会える、山の中の秘湯!?
秋めいてきたと思ったら、ぐんと寒くなってきましたね。先日、急に思いたって子どもとサフィール踊り子に飛び乗り、熱海で温泉に入ってきました。もわりとゆれ立ちのぼる湯気の中、ぽかぽかとしたお湯に浸かっていると、なんだか心も体も癒されていくような気
がします。
さて、本作は季節は少し早いですが、雪景色の中の不思議なお風呂のお話です。トガリネ
ズミを助けたことから、「やあ、いい湯だよ。入っておいで。」とまねかれて、兄妹は動
物たちと森の秘湯につかることになります。
雪景色の中、動物たちと湯けむりたちのぼる
温泉につかる−なんて、楽しそうで夢のような体験なんでしょう。
まるで自分も体験しているかのように、じんわりとした優しさと温かさの満ちた思いを味わうことができます。きっとこの絵本を何度もめくりたくなるのではないかな、と感じます。
また、ぜひ堪能していただきたいのが村上康成さんの描く自然の描写です。彼の作品は、
どれもかわいらしい絵柄の中にも、鳥や動物たち・自然への敬意と造詣の深さが伺いしれ
ます。その一つ一つをじっくり眺めてみるのも本作を味わえるポイントです。
最後にお風呂といえば、小さいお子さんには、とよたかずひこさんの「ぽかぽかおふろ」
シリーズの『もりのおふろやさん』(ひさかたチャイルド、2010)も秋にぴったりでおす
すめです。おふろ絵本もたくさん出ているので、疲れたとき、心も体もあたたかくなりた
いとき、ぜひ手に取ってみてくださいね。
絵本専門士 藤井遥