HARUさんの絵本の時間 #2

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◇ 〈あちら〉側の世界の住人と出会ったとき−その理解と共存の仕方

『魔女たちのパーティー』
文/ロンゾ・アンダーソン、絵/エイドリアン・アダムス、訳/野口絵美、徳間書店、2017年(1981年、祐学社より出版。長く絶版となっていところ、徳間書店より新訳再版)

ハロウィンの季節です。
皆さんはどのようなハロウィンをお過ごしでしょうか。

【あらすじ】
ハロウィーンの夜のこと。ジャックは仮装パーティーに行く途中、月の前をほうきで横切る2人の魔女を見かけました。追いかけて森へ入ってみると、ランタンが吊るされていたり、大きな鍋があったりと、そこでもパーティーの準備がされていて−。

知らないままが、一番こわい
なんとパーティーにいたのは、「まじょ」に「こおに」に「ひとくいおに」! 普段は人間と交わることのない〈あちら〉側の住人たちでした。

かぼちゃのランタンが吊るされ、こうもりシチューを作る大鍋が置かれた森のあきち。パーティーに集まってきた〈あちら〉側の住人たちのユーモラスな会話と様子は、読んでいる私たちも、ウキウキしてきます。

さて、そんな中、彼らに見つかってしまうジャックですが、その反応は三者三様でした。「ひとくいおに」は嬉々として、ジャックを大鍋に放り込もうとします。その迷いのない行動は、彼らが邪悪、というより「ひとくいおに」たるアイデンティティを体現しているだけなんですよね。ただ、人間にとって恐ろしい行動ではありますが。

この絵本の核ともいうべき、心に残る言葉があります。ジャックをかばってくれたこおにのおかあさんの言葉です。

「あんたと しりあえて、よかった。にんげんって、らんぼうで ざんこくだって きいていたけど、あんたみたいな にんげんも いるんだね。」

相手を知らなければ、ただ恐ろしく怖い存在なだけ。でも、知ることができたら、その共存の道を探ることもできますよね。急に仲良しこよしにならなくても、いいと思うのです。

〈あちら〉側の世界と少しだけ交わった瞬間、助け合い少しだけ理解しあえることができた−ジャックとともに私たちもその一場面に立ち会えます。クラシックでちょっとドキドキなハロウィーンの夜を、この絵本を通して楽しんでみてくださいね。

絵本専門士 藤井遥 

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HARUさんの絵本の時間 #1

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◇  赤さがしの季節がやってきた!

『もみじのてがみ』作・絵/きくちちき、小峰書店、2018

空気も涼しくなり、秋めいてきましたね。
皆さんにはもう、「もみじのてがみ」は届いたでしょうか。

【あらすじ】
つぐみが向こうの山から運んできた、「もみじのてがみ」。ねずみは、りすやひよどりたちと「もみじのてがみ」を見つけに、赤探しに出かけます。

▼    そろそろ「もみじのてがみ」が届くかな? そんな季節の感じ方

ねずみに届いた「もみじのてがみ」は、まさに秋の便りです。もみじが赤く色づき、ひらりと地に落ちたときに、それを拾った者への「もみじのてがみ」となるのです。自然から私たちに届く手紙は、そこに文字はなくとも、自然からの恵みにあふれています。

この絵本は、「あの赤はもみじかな?」「違ったー」というパターンの繰り返しで子どもたちにもわかりやすい構造になっています。また、画面いっぱいに広がる鮮やかな画風であることからも、読み聞かせにもおすすめです。

そして、ラストのもみじの赤があふれる見開きのページは、まさに圧巻です! 深く息を吸い込んで、その赤を胸いっぱいに取り込みたくなるような美しさが、大きな魅力になっています。

我が家では、よく子どもと電車の中から「色さがし」をします。たとえば、青がテーマのときは、「青の◯◯!」と、たくさんテーマの色のものを見つけられるかを競います。そろそろ、「赤さがし」が楽しい季節になってきましたね。

このおはなしでは、動物たちは一様に「もみじのてがみ」を見ると「あ!もみじのてがみ ゆきふるの?」と口にします。町にも、山にも、濃淡さまざまな赤があふれてきたら、秋が訪れた証拠。秋をたっぷりと感じるとともに、次に訪れる季節を予感させる−そんな読書の秋にふさわしい、どっぷりと自然あふれる秋を感じる絵本時間を過ごしてみてくださいね。

絵本専門士 藤井遥 

【2022年10月13日号】